The Day of the Pizza in Silicon Valley

7/22/2000


はじめに

 ピザというと日本ではジャンクフードの代名詞でもあるようだが、それは北米でも同じである。時々雑誌に「汚い部屋」をイメージした写真が掲載されることがあるが、そこには決まって飲みかけのコーラと食いかけのピザが転がっている。

 さて、これらの共通したイメージと同じく、日本に居た頃もピザには腹が減ったときに手早く空腹を満たすもの、という理解があった。しかし某所で仕入れた情報を元に、ある日地元のピザ屋を訪れたところ、これがとんでもない誤解であることに気がついた。

Cicero's Pizza

 Sunnyvale にある我が家から車を走らせること15分。左側に見える Apple 本社を過ぎ、しばらく先の交差点を左折すると、右側に Cicero's というピザ屋が見えてくる。

 ここは最近は見かけなくなった、自前でピザのクラフトを原料から作っているピザ屋である。厨房ではピザの生地を両手で高く放り投げて薄く延ばしているのを見ることができる。味に無頓着だと思っていたアメリカ人もここのピザのうまさがわかるのか、週末はなかなかの混雑ぶりだ。やはり手作りのためか待ち時間は短くないが、ピザが焼き上がるまでの間ワインやビールを飲んで待つことができる。また、席が空いていなくてもカウンターに寄っ掛かってビールでも飲んでいればいい。騒がしい店内のためか、ガキんちょ連れでも本当にお気楽である。

 さて、ピザを注文してから待つこと十数分、引渡カウンターからの呼び出しでピザを受け取る。まずは、これがお薦めの Hawaiian Delight である。薄いさくさくとしたクラフトと、とろとろのチーズ、パイナップルの甘みと相まって目頭が熱くなる瞬間である。普段から耐乏生活をしていると、これだけでも十分幸せになれる。

 我が家では "Extra Pineapple" (パイナップル大盛り) のオプションを付けている。これはガキんちょ供が細い指先を生かして、パイナップルだけを先にホジって食べてしまうことに対する対抗策である。(単なる時間稼ぎではあるが...)

 さて、次にこれが Cicero's Buster である。ほとんど全ての種類の具が乗っている。甘みが無いのでガキんちょ供の受けは今ひとつであるが、ビールのお供には最高である。これにクラッシュペッパーをかけて食べると、ビールがいくらでも飲めてしまう。本当に困ったものだ。

 また、ピザがまだ熱いうちには、ガキんちょ供はピザを食べたい気持ちとそれを取れない悔しさで葛藤の表情を見せる。でもここで「小さな心でそんなに悩んでいるのか」と仏心を起こして下手に手助けしてはいけない。子供に困難や悩ましさを教えるのも親父の役目である。教育の甲斐あって、年齢が上がるに従い熱いピザを上手に扱うことができるようになるようだ。やっぱり本能に訴える教育は強力である。

おわりに

 外食について、だんだん簡単な方向へ傾倒していく自分が恐ろしいが、これも子連れの悩ましさである。これも日本に帰ったら最初からやりなおしかと思うと、本当に気が重い。宅配ピザの味は今となっては思い出せないが、やはりできたてでなければ、30分以内の配達であろうと「冷めたピザ」である。日本に帰ってからも Cicero's のピザに匹敵するような、ウマくて安くてお気楽なピザに出会えるだろうか。ヤレヤレ。