Nixie Clock Project
ニキシ管時計犬小屋式
2003/9/15
きっかけ
どたばたの極致だった帰国から早くも三年目に突入し、最近ようやく身辺が落ち付いてきたような気がします。数年ぶりに週末秋葉をうろちょろする生活に戻り、しばらく半田ごてを握っていない自分に気が付くこともしばしば。秋月やらガード下を歩き回ると昔はあまり見かけなかった 1Chip のマイクロコントローラが気になります。折しもレトロブーム、また自分自身の光り物趣味、さらにはニキシ管のありかを耳打ちする友人の煽りもあって、衝動的にニキシ管時計を製作しました。
概要
この度製作した時計はハードの規模が小さくなるよう以下の構成としました。回路や制御プログラムは公開されている技術情報を参考にしたオリジナルです。
- 表示部 - 秒表示を含む6桁のダイナミック点灯
どうせなら常に表示がちらちらと変化しているのがいいと思い、表示には秒を含めました。秒表示を追加したことで点灯回路は複雑になりますが、この問題はダイナミック点灯を採用し解決しています。ニキシ管のダイナミック点灯は難しいと聞いていましたので、表示部だけのプロトを仮組みし、点灯条件の最適化を行いました。以下の写真は前述したプロトのダイナミック点灯回路を Basic Stamp で駆動しているところです。ニキシ管はパルス点灯タイプのCD-83Pを使用しています。
- 電源部 - 5V単一電源, B電源はDCコンバータにより昇圧
以下の写真はブレッドボード上に組んだ電源部分です。今回の時計には遙か昔に購入した秋月DCコンバータを二個並列にして使用しました。これをダイオードブリッジにより整流しDC 200Vを得ています。
このCD83Pはパルス点灯用のためか、意外と過電圧に弱いことがわかりました。当初はB電源をレギュレートをせず使用していましたが、ダイナミック点灯の実験をしている時に過電圧でニキシ管を壊してしまいました。最終的にはツェナーを並列に入れ200Vに安定化しましたが、少々やりすぎのような気もします。
ちなみにニキシ管の破壊モードはセグメントとピン端子間のスポット溶接部分溶断です。(と、言うか一般的な真空管の破壊モードなのですが) このニキシ管は同じ電流制限抵抗を付けても、やはりプレート面積の大きな「8」と「0」が壊れやすいようです。最初は電流容量の問題かと思って散々悩んでしまいました。以下は溶断部分の拡大写真です。
ダイナミック点灯をしている時の事故なので、この破壊モードで一度に複数の桁を壊してしまいました。(おまけにいい調子で酔っぱらっていたので、おかしいと思った時に制限抵抗を小さくするという暴挙に出てしまったのですが) 「8」や「0」が壊れたニキシ管は適宜問題の無い桁に使うとして、余ったものは全く勿体無い話ながら何かオブジェのような怪しいモノを作ろうかと思っています。とりあえず実験基板は以下のように完成しているので、時間のある時に制御部分を作りたいとは思っています。
- ニキシ管ドライブ部 - 74141
参考にした製作例ではニキシ管のドライブに高耐圧トランジスタを使用しているものがほとんどだったのですが、今回は無理をせず(面倒くさいので)専用部品を使用しました。秋葉から消えて久しいニキシ管ドライバである74141ですが、タイミング良く海外で扱っている店から輸入することができました。(その後すぐに在庫が無くなってしまったようなので幸運でした) 74141は現在では既に製造終了となっていますが、海外も含めて探せば手に入れることは不可能では無いようです。
ところで入手した74141ですが、実は一個ICソケットに入れる時に粉々に砕けてしまいました。セラミックパッケージを接着しているモールドが劣化していたのかもしれません。ハードも生物も絶滅危惧種には優しい取り扱いが必要なようです。後悔先に立たず。
- その他
ダイナミック点灯に必要なニキシ管のアノード切り替えについて、参考図書にはトランジスタによる参考回路が掲載されていました。しかし、どう考えても部品点数も多くなるし芸がありません。そこで色々と検討したあげく、入手が容易で安価な半導体リレー AQV254Aを使用しました。当初は「リレー」という言葉に惑わされてスイッチング時間が懸念だったのですが、実際に組んでみるとニキシ管のダイナミック点灯程度だったら全く問題無さそうです。しばらくして在庫が無くなってしまいましたが、この半導体リレーは秋月で購入したものです。
また、時計のコントロールに PIC16F84、クロックに高精度クロックのKTXO-18Sを用いました。KTXOは出力をそのままPICのクロックとし、タイマ割り込みによって時間計測を行っています。タイマ割り込みについてはこちらを参考にしました。
完成
以下の内容で完成しました。DP は色々と悩んだ末、振り子表現として使うことにしました。実際の表示はこんな感じになります。この動画では結構ちらついているように見えますが、実際肉眼で見るとちらつきはほとんど気になりません。実際はもっとスキャン速度を上げることができるのですが、若干ちらつきがある方が「いい感じ」になるようです。
- 外観
ケースはリードのPK-5を使用しました。前面パネルは2mmオフセットさせ、東急ハンズで購入したセピアスモークのアクリル板を入れてあります。この部分の加工が一連の製作過程の中で一番の難関だったと思います。時刻合わせのスイッチは背面に三個取り付け、それぞれ、秒の0リセット、時間、分の早送りとしてあります。また、内部回路は未配線ですが、外部からリセットを行うためのジャックも取り付けてあります。これは将来電波時計を買うためのいい口実になるかも。
- 内部構成
当初製作したプロト表示部分をそのまま流用した為、基板は二枚構成になっています。一枚目が表示部分、二枚目が電源と制御を受け持つ変則スタイルです。スペースの問題もあるのですが、もうちょっと最終形態を意識して作り始めれば良かったと後悔しています。
なお、DCコンバータの下には、ダイオードブリッジなどの部品を配置しました。
次は表示部分ですが、これはコネクタとDP点灯用のトランジスタを追加した以外はプロトと同一です。トランジスタによるセグメントの制御については、こちらとこちらのサイトを参考しました。
- 制御プログラム
この歳になってアセンブラを使うのもかったるいので、秋月で売られている Grich-RC社製のPICCを使用しました。お試し版なのでコードは1K迄ですが、時計程度の用途には十分だと思います。制御プログラム自体はあまり複雑なことをやっていませんが、PICC自体の情報が少ない上に、プログラムの内容によってはエラーも吐かずにコンパイラごと落ちるのでデバッグには苦労させられました。特にDPの制御は当初配列を使用していましたが、変数領域が不足した上に PICC で配列定数を使うとコンパイラが落ちるので、ヤケクソで If/Then 文の羅列としてあります。
設計資料
参考にした資料及びサイトなど
- 実用電子回路4巻 - ガス放電管表示回路 (既に絶版?)
- トランジスタによるニキシー管点灯について - こちらとこちらのサイト
- PICC によるタイマ割り込み - こちらのサイト
- 某秘密研究所製作の競作品